Darkest White
「こーお。」
「…。」
「こーーおっ。」
校門を出て角を曲がったところでわたしは光を引き止める。
普段より甘えたっていいよね。だって今日は記念すべき初登校だもん。今日くらい、許してね。
「んだよ。」
光は少しだけ気怠そうに立ち止まる。
「アイスクリーム食べたい。」
「はあ?今?」
「今!」
「ガキが。」
「はあ?ガキじゃないし。今食べたい気分なの。」
だって家に帰ったら、また光どこか行っちゃうでしょう?わたしを、置いて行っちゃうんでしょ。
「お前相変わらず好きだな。」
「だって…」
普段あまり食べないわたしが何か食べたいっていうと、光はいつも決まって付き合ってくれるから。その間だけ、光のことを独り占めできるから。
知ってるよ。
夜中に帰って来た時、知らない香水の匂いがしてること。
知ってるよ。
わたしがいない間に、知らない女の人と会ってることくらい。
…知ってるんだもん。
「はあー…しゃあねえな。行くぞ。」
光は携帯を取り出すと、なにやら来るはずだった運転手さんに断りを入れてるみたい。
少しだけ申し訳なくなってうつむく。
「今日くらい付き合ってやるよ、バカ。」