Darkest White
「んじゃあお疲れ。」
店長はタバコを灰皿に押し付けると軽く顎をしゃくった。
「はい!ありがとうございます。お疲れ様でしたっ。」
もう一度深くお辞儀をするといそいそとその場を離れる。
店長はなんだかんだ言っていつだってわたしに構ってくれる。
このおっちゃんに出会ってこの秋でちょうど一年だ。
夜の冷たい空気に当たるとブルッと身震いをする。
「さ、寒い。」
吐き出された息はまるで機関車の蒸気みたいに墨色の空に吸い込まれてゆく。
カラオケ店の裏口の通りにはバイト休憩でたむろしている、店長の言う通り、確かに雰囲気の悪い連中だ。
わたしを横目で捉えると、目線で挨拶をしてきたから、わたしも笑顔で頭を下げる。