Darkest White
Jealousy
「そう、それでね!」
目をきらきらと輝かさねながら彼女は笑う。
「天馬って、こう見えて昔結構ドジだったのよ。だから、」
「っるせえ。言うな。」
「あーもう。ごめんね、凛ちゃん?天馬、すぐ拗ねちゃうの。」
「いえ…。」
手元にあるクッキーをポリっと折る。
「ほら、天馬も優しくしないと。」
「チッ。」
「凛ちゃん怖がっちゃうでしょ。」
汗をかき始めたグラスを瞳に映しながら、もう一度クッキーの端を折る。
どうしてこうなったのか…
目の前には普段見せないふてくされた表情の光に、彼のことを天馬と呼ぶ彼女、鈴葉さん。
光は…天馬…そういう名前らしい。
本当のところはわからない。だけど、それを否定しないということは、きっとそうなのだろう。わたしには教えてくれなかった名前を、鈴葉さんはしっていた。
天馬。
確かに、彼らしい名前。
空を羽ばたく馬を思い描いて、どこか落胆しそうになる。
勝手に光、光って騒いで。バカみたい。
でも、それじゃあなんでわたしには教えてくれなかったの…?
それに加えて、二人の関係は結構前から続いているみたいにも見える。
まるで…カップルみたい。
きっとそう思うのはわたしだけではないはず。自然に交わされる会話に、居心地が悪くなってもぞもぞする。
今まで光と岬しか見たことのなかったこの家に、知らない女の人がいることに違和感を覚える。笑えちゃうよね…別に、光の彼女でもなんでもないのに。