Darkest White



「はあー…んな落ち込まなくてもいいだろ。」

ため息の主は朝の恵と代わって、気怠そうにミートソースパスタを頬張る光によるもの。

「だってだって!せっかく話しかけてみたのに…無視って!無視だよ、無視!」

わたしはバジルを口に入れながら尚も言い募る。

川島花蓮のあの凍てついた表情が脳裏から離れない。

あーこわかった。

「そんな日もあるって、ね?凛ちゃん。元気だしなよ。」

おかしそうにそう話しかけてくるのは、久しぶりにこの家に戻ってきた岬。一体どこで何をしていたのか…それは相も変わらず謎に包まれている。

「っていうか、いつの間にそんなに凛ちゃんと仲良くなったわけ?なんだっけ、光。そう、光くん?」

少し嫌味っぽくそう言う岬に面倒くさそうに眉をひそめる光。

「私たち別に仲良くっていうか、」

「悪いやつじゃねえからな。」

そう言ってお皿を持って立ち上がる光に再度惚れてしまうわたしは単純なのかなんなのか。

だけど岬は鋭くて、そんなわたしを見て、なぜだか少しだけ寂しそうな表情をする。

「凛ちゃん…よーく考え直してね、その気持ち。」

「え…っ、」

どう…して…

「さあーてと、俺はもう行くとするか。」

「み、さき!」

わたしは思わず彼の名を呼ぶ。

「どこ行くの?」

岬が動きを止めて、ゆっくりと振り返る。茶髪の間から覗く小枝色の瞳は、温かさの裏にしんしんと降る雪のような冷たさ…ううん、侘しさを含んでいる。

「…仕事だよ?」

目尻を少しだけ細める岬。

「気になる?」

「えっ、?」

「俺たちのこと、気になってるんでしょ?」

ちらっと目線を上げれば、光はもうこのリビングにはいない。

岬が大きく足を出して、距離がぐっと縮まる。

嗅ぎ慣れないミントの匂いが鼻をつく。


「教えてあげようか?」


耳元で岬の吐息が熱い。


「あ…男性恐怖症治ったんだ?」


クスッと笑うからゾワッと背筋が凍る。


「んー…俺たちはさ、まあ…」
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