Darkest White
「川島…さん?」
どうして引き止めているのか自分でもわからない。
だけど彼女は本当にこちらに見向きもしないのだ。
さすがにわたしも頭に血が昇るのがわかった。今までだったら笑顔でごめんって言って戻ってきてたのだろうけれど、光の俺様な態度の影響か、はたまた恵の直球な性格が乗り移ってきたのか、わたしはもう一度声をかけていた。
「川島花蓮さん!」
角を曲がって彼女が見えなくなる。別に走っているわけではないけれど、歩く速度が速まっていたのは確か。
わたしも続いて角を曲がったとたん、急に彼女が止まって振り返ったものだから、思わず彼女に飛び込みそうになってしまった。
軽く舌打ちをしながらわたしへ仕方なく視線を送る彼女は、やはりこの世のものとは思えない雰囲気を纏っている。
「……なに。」
別に大きな声を出したわけではないのに、ざわめきを伴う廊下に彼女の声は異様によく通った。
高すぎず低すぎないその声は、妙に人を落ち着かせる何かを持っている。
「えっと、その…。」
「用ないなら行くけど。」
イライラしているのかわたしと目線すら合わせずに歩き出そうとする彼女。
「……す、鈴葉さん、知ってますか…?」
「……。」
ピタッと止まる彼女の足。