Darkest White

……。



「不幸じゃないよ。」


いつの間にか唇がそう言葉を綴っていた。


「不幸だった、だけ。」


そう伝えると彼女はうっすらと浮かべていた微笑を消した。


「だったら尚更関わんな。闇、もう一度見たくないなら、近づかないで。」


衝撃が腹底を走った。


闇を、もう一度見たくないなら、近づかないで…なんて、どうしてそんな悲しいことを彼女はえるのだろうか。


まるで彼女自身が闇の塊かのように、そんな風に語る彼女が、すごく寂しく見えた。


「大丈夫だよ。」

「……。」

「闇、見ないから。」


そう言って小さく笑えば、彼女は凍てついたような眼差しでわたしを見やる。


そして口を開きかけたけれど、結局何も言わずに背を向けた。



今度は、わたしも追わなかった。
< 228 / 270 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop