Darkest White




「夜景の見えるレストラン?」

「ああ。」

「ねね、美味しいの?」

「あ”?んなの食わねえとわかんねーだろうが。」

「え、もしかして行ったことないの?」

「味なんて覚えてるわけないだろ。一日に何食食ってると思ってるんだ。」


そう言って呆れたようにわたしへ視線を向ける彼に、わたしも哀れみの視線を送り返す。


「ねえ、値段って高いのかな。」


車を運転する彼は、うんざりしたようにため息を吐く。


「はあ…いい加減静かに運転させろ。」


わたしはそんな光にムッと口を噤んで外の景色へ顔を向ける。

夜の高速道路はどこか妄想的だ。

淡いオレンジの街灯がビュンビュンと過ぎ去ってゆく。人影のないこの空間が、なんだか好きだったりもする。


「あ…。」


一瞬だけマンションの部屋の奥でキラキラと光るクリスマスツリーが見えた。暖かで柔らかい光に包まれたその木は、愛で溢れているように感じられた。


わたしが最後にクリスマスツリーを飾ったのはいつだろう。


あの時のポップコーンの弾ける音と、ホットチョコレートの甘い香りを今でも覚えている。

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