Darkest White
*
「夜景の見えるレストラン?」
「ああ。」
「ねね、美味しいの?」
「あ”?んなの食わねえとわかんねーだろうが。」
「え、もしかして行ったことないの?」
「味なんて覚えてるわけないだろ。一日に何食食ってると思ってるんだ。」
そう言って呆れたようにわたしへ視線を向ける彼に、わたしも哀れみの視線を送り返す。
「ねえ、値段って高いのかな。」
車を運転する彼は、うんざりしたようにため息を吐く。
「はあ…いい加減静かに運転させろ。」
わたしはそんな光にムッと口を噤んで外の景色へ顔を向ける。
夜の高速道路はどこか妄想的だ。
淡いオレンジの街灯がビュンビュンと過ぎ去ってゆく。人影のないこの空間が、なんだか好きだったりもする。
「あ…。」
一瞬だけマンションの部屋の奥でキラキラと光るクリスマスツリーが見えた。暖かで柔らかい光に包まれたその木は、愛で溢れているように感じられた。
わたしが最後にクリスマスツリーを飾ったのはいつだろう。
あの時のポップコーンの弾ける音と、ホットチョコレートの甘い香りを今でも覚えている。