Darkest White
本当に楽しかった、数少ない幸せな思い出の一つ。
ふと視線を感じて振り向けば、少しだけ目を細めてわたしを見つめる彼がいた。
トクン。
「…帰りにツリー買って帰るか。」
「え…?」
行き交う車へ視線を移しながら光は唇を動かす。
「家にねえんだよ、ツリー。」
もしかしてじゃなくても、光…
「…あのね、わたしツリーが欲しいわけじゃないの。光と一緒に楽しくクリスマスを過ごせたらそれで十分なんだ。」
そう言って微笑んで彼を見つめれば、少しだけ微笑を浮かべる光。
「そうか。」
ハンドルを握る光はすごく大人びていて、高校三年生にはとてもじゃないけれど見えなかった。