Darkest White
「凛、間に合わないんじゃないの〜?遅刻しても俺知らないからねー。」
その声にハッと腕時計に視線を移す。新品のこれは、岬がなんでもない日にいきなりプレゼントしてくれたもの。最近どうしてか岬は機嫌がいいみたい。
だけどこれが光からだったら…なんて、考えてしまうわたしはきっと卑怯者だ。
慌ててスクールバッグを肩に引っ掛けるわたし。光も同じ学校なんだけどな…なんて、わたしは口が裂けても言えない。
「いってきまーす!」
声をあげて玄関を開ければ、岬が投げやりに手を振ってくれてるのにも関わらず、光は台所で耳に携帯を当てながらわたしには見向きもしなかった。まだ私服姿の彼は、今日は当分学校に行くつもりはないみたいだ。
最近は光と岬の家がどの辺りにあるか、この付近に何があるか、などということがわかってきた。
確かに大豪邸ではあるけれど、別に闇組織が仕切る工場地帯にある、とか、もしくは高い塀に囲まれたお城みたいな場所にある…というわけでもなかった。
普通の住宅街の一つがこの家であるだけで、別に刺客を見たこともなければ、変なリムジンがきたりすることもなかった。
普通にスーパーだってあるし、駅から徒歩10分という良い物件でもある。
最初の頃の銃撃戦や刺客事件などが嘘みたいにとても平和な日々が続いていた。