Darkest White
二人で肩を並べて歩いていること。
優しい瞳がわたしを見守ってくれていること。
わたしの話を一つ一つ聞いて嬉しそうに頷いてくれること。
全部が、苦しい痛みを広げていく。まるでぱっくりと空いた傷口に塩を塗っているみたい。
「それで?わたしがいない間どうしてたの?」
「いつもと変わらないよ。」
………
そう、だよね…。
「わたしがいなくても楽しい?」
「なんだ、それ。」
笹原さんは困ったように眉根を寄せる。
「楽しい…って聞かれると、返事に困っちゃうなあ。寂しかったよ、僕は。」
ああ…やっぱり彼はこういう人なんだ。
だからわたしは泥に足を掬われたみたいに抜け出せない。
彼のため。彼のため。
そう言い聞かせている自分の本当の顔が、目の前にまざまざと見えて身震いをする。
「だけど!」
大人らしい表情をしてわたしを真っ直ぐと見据える。
「勉強第一!凛ちゃんは何も心配しないで心ゆくまでオーストラリアで勉強しなさい。」
まるでわたしはまだ子供だと、そう言われているみたいで悔しかった。
全て見透かされているようなその小さな優しい瞳に、子供と大人の距離感を感じさせられたんだ。