Darkest White
ー---ー…
「……笹原さん。」
「うん?」
首をかしげて振り返る笹原さんの髪の毛に白髪が見え始めていることに、胸がキュッと痛くなった。
笹原さんが実の父親だったのなら…わたしのお父さんであったのなら、どんなにかよかったことだろう。
あの日三人で囲んだ食卓は本当に温かくて、みんなの優しい笑い声がくすぐったかった。
もしも笹原さんがお父さんであったのなら、わたしはきっと幸せな女の子になれたのだろう。
子供が学校からいなくなったという連絡が入っても何もしない母親。そんな彼女を、ずっと支え続けてくれる、本当に心の底から優しいあなた。
そんなあなたを騙し続けているわたしを、神様…神様、どうか呪ってください。
「……今日の夜ご飯は何?」
「えっ…ああ、そうだな。今日はお母さんのところへ行くから…オムライスだろうな。」
笹原さん。
きっと笹原さんに出会えたのは、わたしの暗い人生の数少ない奇跡なのだろう。
そしてもう一つの奇跡は…
「わたし、心を許せる優しい人に、出会えたよ。」
小さく笑ってそう伝えた時、あなたの瞳に盛り上がった涙には気づかないふりをしてあげた。
ずっと迷惑をかけ続けてきたけれど、少しは自立できるようになりました。
今まで本当に…本当に、ありがとうございました。
しわの増えた頰にこぼれ落ちた涙の筋を、北風がそっと撫でて流れていった。