Darkest White
今はあなたが恋しい。
胸が苦しくて孤独な今…思い浮かべてしまうのは、どうしてあなたの小さく笑った横顔なのだろう。
バーカって笑うあなたにっ…そばにいてほしい。
ー光っ……会いたいよ。
最近はわたしに目も向けないバカな光なんだから…そんなバカで意地悪で自分勝手なあんたの温もりが…っ、悔しいけど、
ー恋しいよ。寂しい。寂しくてたまらないんだ。
今のわたしに残っているのは、光…あなただけだから。
光っ…、こお…!
「……なにやってんだ、バカが。」
え…
ぼやけた視界の先に、スラッと伸びたシルエットが、黒光りする車に寄りかかっているのが見えた。
「…おせーぞ。何時だと思ってんだ。」
慌てて携帯を引っ張り出せば、未読メッセージが表示されている。
『迎え行く。7時。駅前』
真っ暗な空。肌を刺すような空気。
きっともう子供達は眠ってしまっているだろう。
そんな中あなたはどうして…っ
ここまで来てくれたの。ずっとずっと探してくれてたなんて…っそんなこと、期待してっ…
あの人にそっくりでっ…
「どう…して…」
「あ?理由なんて必要か?」
……ああ、光。
光がいてくれなかったら、っ、わたし……
「こんなブッサイクな顔しやがって。」
「…いだっ…」
赤いワイシャツの袖で乱暴に顔を拭かれ、普段だったら『ブサイクじゃない!』って、反抗するところを、今はなぜだかひどく安心して、ことばがでなかった。
「早く乗れ。」
光はそんなわたしに対して何も言わず、助手席にわたしを押し込むと、自分も運転席にどかっと腰を下ろした。
静かな車内の空間に、低い音量でジャズが流れている。
自分の声さえも飲み込まれてしまいそうな無音の空気を重く感じないのはなぜだろう。
「……高校、卒業したら…一生懸命働いて…全部、返すから。」
震えないように発した声は、想像よりもひどく小さく聞こえた。
「やめろ……それは誰に言ってるんだ。」
「…え?」
涙をぐっとこらえて顔を上げれば、ハンドルに手をかけながら、わたしの顔を見ずに前方へ顔を向ける彼がいた。
なぜだかその横顔が辛そうに見えたのは…気のせいだろうか。
「……俺にそんな事言うな。」
「………。」
隣の席から香る甘いバラのような匂いに包まれながら、わたしは移り変わる外の景色を長いこと見つめていた。