Darkest White
知らないうちにぎゅっと拳を作っていて、爪が皮膚に食い込んだ。
どうしてこんなにも体が震えているのだろう。
まるで心臓発作を起こしているみたい。
息の仕方を私は忘れてしまった。
「…っ、どうして…」
どうしてみんなしてっ…
「…光はそんな人じゃない。」
小さく呟いた心の声が、口に出すことでもっと確信に近づく。
「え?」
鈴葉さんの戸惑った声が耳に届く。
「川島花蓮はきっとすごく辛かったのだと思います。それはもう私が理解しようとしても一生かけても理解できないくらいの苦しみだったと思います。」
それでも。
「その時光が彼女に関わったのなら…」
…それはきっと、彼の不器用なりの優しさだったんだと思う。
「光には、彼女をどうにかしてでも救いたいという気持ちがあったのだと私は思います。」
鈴葉さんが何を考えているかなんてわからない。はいそうですね、って簡単に同意なんてきっとできないと思う。でも、だからと言って彼女の肩を持つのも違う気がする。
誰がなんと言おうと、私だけは光を理解していてあげたいから。
「あんた…自分が何言ってるかわかってるのっ…?こっちの事情も知らないくせに偉そうに…っ!」
案の定鈴葉さんは怒りでわなわなと震えている。
でも、彼女の気持ちがわからないわけでもない。大切な誰かが苦しんでいるのを見て、正常な思考を保てるわけがないから。
それは私が一番知っている。
「それは謝ります。本当にごめんなさい…でも、だからと言って鈴葉さんの光に対しての気持ちに同意することもできません。私だけは、光を信じてあげたいから。」