Darkest White
「花蓮はっ…っ!」
鈴葉さんの悲痛な声が裏返る。
「あの自己中心的で、他人の気持ちを考えられない悪魔にっ…体が傷ついている中、ホテルに引き摺り込まれて…っあんなやつと…っ肉体関係を持って…っ本気で恋して…っ花蓮はあっさり捨てられたの!!その気持ちがあんたにわかるわけがないっ…!!!」
理性を失った鈴葉さんは私の肩を掴み激しく揺らした。
「兄にも捨てられて…っまた、捨てられたのっ…二度も捨てられるって気持ち、考えてみたことある!?」
二度、捨てられる気持ちー
私はいつも怖かった。
いつか母親に見捨てられるんじゃないかって。
いつか、笹原さんにも置いていかれるんじゃないかって。
そしたら私は一人ぼっちになってしまう。
「私はね、あんたみたいな頭の回らない奴が花蓮みたいに苦しむ前に教えてあげてるの…!あんたもそのうち捨てられるんだよ!!!」
泣き叫ぶ彼女を見て、私は浅く息を吸う。彼女はきっと、本当はすごく良いお姉ちゃんなのだろう。だけど、彼女の視野は狭い。狭すぎる。
「…結論ばかり言わないでください。」
「…はっ?」
「捨てられるまでの過程はなんだったんですか…?川島花蓮は、彼に拾われて、傷を癒すことができたんじゃないですか…?違いますか?光は無感情に人を弄ぶことはしません。光は優しくて、優しくて、誰よりも他人思いのー」
パシッ!!
じんじんと鈍い痛みが頬に広がる。
久しぶりの感覚に、ぞくぞくと鳥肌が立つ。でも、ダメだ。折れちゃダメだ。
「叩けばいいじゃないですかっ!!光が尽くした時間と努力と犠牲は、そんなことで無くなりませんからっ!!!」
「出て行って!!!二度と関わらないで!!!花蓮にも、あいつにも!!」
その言葉に、私はハッとして彼女を振り返った。
涙を流して狂気じみた他様子で怒鳴り散らす彼女を見て、私は気づいてしまったのだった。