Darkest White
「いってきまあす!」
家に響くくらい大きな声を出して玄関をかけでる。
頭上に広がる果てしない空は雲ひとつない蒼色。
風で揺れるのは紺色の制服のスカート。
だけどそれも少し窮屈になってきている。
ふわっと顔にかかる短い髪の毛を抑えると、微かに昨日のシャンプーの香りが鼻をくすぐった。
清々しい空気を胸いっぱい吸ってわたしは小さく微笑む。
よしっと自分に気合を入れて、ふと腕時計に視線を移して慌てて飛び上がる。自転車置き場を小走りしながら、少しだけ不恰好な形のおにぎりを口に詰め込んだ。
塩辛い鮭の味がジュワッと口中に広がって、それを水筒のお茶で流し込むと、自転車に飛び乗り、出発だ。
ちらほらと舞い降りる雪のベールの下、わたしは馴染み深い高校へ足を踏み入れる…
のではなく、マスクとメガネをかけて、近くのコンビニに滑り込む。
「おはようございます。」
そう挨拶して急いで着替える。
肩で波打つ髪をまとめてポニーテールにすると、毎朝ちょっぴり気合が入る。
シフトの人と交代して、わたしはレジの前に立つ。
そう。わたしは実は密かにバイトをしている。
こんな朝早くから一人で歩いているとばれたら色々と面倒だけど、どうしても制服を着ていたいのはちょっとしたわたしのわがまま。
だけど常識的にこんな朝早くから誰かに見つかるはずもなく、
誰もこないコンビニで襲いかかってくる眠気と闘う。
コンビニの匂いはなぜだかとても落ち着く。まるで私のために用意された第二の寝室のようだ。