Darkest White
「…ああ…ああ…頼む…じゃあ、」
なんとも短い会話を終わらせたらしい彼は立ち上がると、
「そこどけ。」
まだいたのか、って感じでわたしを見る。
いや、どけはないでしょ、どけは!
腸が煮えくりかえるとはこういうことなの?!
「どこ行くんですか!」
彼は無視することに決めたのか、まるでわたしが見えていないかのように前を見据え、
あいつはそのまま背を向ける。
その隙にと玄関にかけよるわたしを見て、彼は忘れてた、という感じで振り返ると、
「玄関の前、刺客いるから。」
「ぎゃっ?!」
1メートルくらい後ずさるわたしを見て、彼は面倒くさそうに眉間にしわを寄せた。
な、なんなのここ…
「わたしはどうすればいいんですか?!」
「はあ…めんどくせえんだよお前。失せろ。」
「失せろ…?」
「あいつの部屋にいろっつってんだ。」
あいつ?だれそれ。
ここの家の人はちゃんとした言葉をしゃべれないのだろうか?
さっきも中島さんが、『あいつ』って言ってたし、今もこの人『あいつ』って言ってる。なんなのさ、もう。
そんなわたしの表情を読んだのか、何か言おうとしたが、結局何も言わずに背を向ける彼に、わたしはあっけにとられて突っ立ってることしかできなかった。