Darkest White
どうりで見張りがいないわけだ。
わたしが出れば自分は死ぬ。
そう、簡単なこと。
だから見張りなんて必要がないわけだ。どんなことがあったってわたしは家から出ない。いや、正確に言えば、出られないわけなんだから。
何に絡んでるのか知らないけど、これこそまさに裏社会。
自分が一生関わることがないだろうと思ってきた人たちの家に今、わたしはいる。
本当に二人の思考回路についていけない。
こんなゆるい誘拐なんてあるのか、普通?
まあ、普通じゃないってことかな…
「ああー、もお。」
「あいつ」が誰だかわかんないし、その人の部屋への行き方もわからないし、ましてはさっきの部屋への戻り方もわからない。
こんなだだっ広い家にさっきから二人しか住人を見ていなとは、すごく奇妙だ。
ぶるっと身震いをすると、とりあえずさっきdevilが座っていた革のソファにちょこんと腰をかけてみる。
うん、座り心地は良い。
さあて、どうする自分。
もし今日あのコンビニにいなかったら、あの襲撃を見なかった。もしあの襲撃を目撃しなかったら、わたしは攫われることがなかった。
別に警察に通報しないっての。
だから家に返してよう…。