Darkest White
ていうかあのdevil、赤の他人の女が自分の家をうろつき回っていて、気持ち悪くないのかな。
わたしだったら絶対に無理。
それになんなのあの冷静さ。まるでわたしがずっとこの家に住んでいたみたいじゃない。
「devil…どこお?」
小さな声を出してみるけれど、家はしんと静まり返ったままだ。
中島さんは怖いからやだしな。
「devil…?」
名前も知らないことに今更気付きながらも、わたしは自分の中のあだ名で呼んでみる。
もちろん返事はない。
なんなのもう。本当に、なんなの。
「すいませーん!!!」
思わず金切り声をだすと、家中にこだまし、グワングワンと腹の底で震える。
これでこなかったらあいつは耳がおかしい。
ていうか、誘拐されている身で自分がここまで大胆なのが肌寒い。
その理由を知っているから、自分に対しての恐怖がこみ上げてくる。
「…黙れ。」
血が凍るほど低い声が頭上から聞こえてきてわたしははっと顔を上げる。
二階の部屋にいたのか、階段の上で、眉根をしかめながら壁にもたれかかっている。
「帰してください!お願いします!」
なんとか微笑みを取り繕う。
devilはチッと舌打ちをする。
「死にてえのか?」
「そんな脅しー」
「死ぬっつってんだろ。」
「え?」
「外でたら死ぬ。」