Darkest White
再び歩き出した柊さんの後を続きながら、未だに呻き声を上げる心臓を抑えるように、ワイシャツの襟あたりをぎゅっと握りしめる。
「足もと気をつけて。」
そう言って柊さんがさすのは段差に続く階段。
「え、あの、どこに、」
「こっちの方が安全だから。」
怖くて怖くてたまらないけれど、あともう少しで帰れると思えば少しは気が楽になる。
細長い階段を降れば地下室のような広い空間が続いている。
「ここは…?」
「ああ、倉庫的な?でも、刺客から逃れるために作った場所だから、なんも置いてないよ。」
常に刺客から追われているような言い方をする柊さんに首の毛を逆立たせながらも、わたしはもちろん首を突っ込まない。
こういう時はおとなしくしてるのが一番だ。それはわたしが一番よく知っている。
「こっちこっち。」
柊さんは倉庫の右端にある戸を引いた。
「わっ…。」
思わず声が出てしまった自分を責めるつもりはない。
だって、だって…!!
「ここが車庫。」
余裕で20台くらい高級車が並んでるんだもん!!!
「はい、乗って。」
そういって柊さんが指すのは黒いピカピカの軽車。
「公に高級車のれないから。」
いや、これでもすごいよ、うん…。