Darkest White
頬がdevilの大きな胸に当たった。
朦朧とした意識の中、鼻をかすめる甘いバラのような香りに溺れそうになる。
筋肉質な腕が膝下と後頭部の下に回ってしっかりと全体重を支えている。
ほとんど他人同士のわたし達。
なのになぜだか安心しきっている自分がいて、背中の痛みも身体中の熱もあまり感じなくなった。
ぼんやりとした視界の先に見えるのは、devilのシュッとした輪郭とわたしを見つめている、まつ毛で縁取られた伏せた瞳。
「俺、お前みてえなやつ見ると、イライラする。」
は?って聞き返す力もないわたしは、脱力してされるがままに運ばれてる。
「なんか、うぜえんだよ。」
愚痴られてるのか侮辱されてるのかわからないけれど、彼の暖かいぬくもりだけは本物だって知ってるから。
コンビニで毎朝かけてくれる言葉は本心だって知ってるから。
わたしは苦痛で歪めていた顔を、ふっと和らげた。
devilが変なものでも見るようにわたしを見つめているのがわかる。
「う、ん…うざい、ね。」
頰の緩みが止まらない。
うざいって言ってるのに、わたしを運んでるのは誰?
面倒臭い、イライラする。そう思われるだけでも幸せなのかもしれない。
本当の憎しみをわたしは知ってる。
だから、苦笑が止まらない。
「病人は黙って寝てろバカ。」
イライラを含んだdevilの低い声が頭上から降ってくる。
いちごミルクは買わないの…?なんてどうでもいいことを思いながら、わたしは激痛に体を震わせながら意識を手放した。