Darkest White

この人は何を思ってそんなことを言っているのだろう。


何を思ってわたしを車に運んで、何を思ってわたしを見ているのだろうか。


「……。」


devilは何も答えないわたしに不満を抱くこともなく、何事もなかったように窓の外を見つめる。


寒い…痛い…寂しい…


がたがたと震える体を抑えられなくて、痛みも増しているような気がする。


熱で脳が朦朧としていて、ちゃんと考えることができない。


「暖房いれろ。」


そんな声がどこかで聞こえ、何かに包まれたような気がする。


だけど頭が痛くて背中が悲鳴をあげていて何もわからない。


怖い…怖い…
怖い…


だけど、いくら恐怖に襲われても、ずっと涙は出てこない。


きっと枯れてしまったのだろう。それがわたしにとって一番辛かった。


「痛えか。」


ぼんやりとした意識の中そう尋ねられた。


「どこが痛え?」


ごつごつと骨ばった手がわたしの額に触れる。


「っ…うっ…」


熱にうなされたように力のない声が出る。


「すぐ医者が来る。」


激痛の中をさまよい歩いていても、その声だけははっきりと耳に届いた。


「っ、ダメっ!!!」


ヒューっと息を吸って、枯れた声で尚も叫ぶ、


「ダメっ!!!」
< 68 / 270 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop