Darkest White
ーー-----
夕方、光が部屋に現れた。
久しぶりに見る彼が放つオーラは相変わらずとてつもなくて、ぎゅっと胸を掴まれたみたいに、彼から視線を外せなかった。
彼が何をしている人なのか、無性に気になって、質問がぽんぽんと浮かぶけれど、全部を唾と一緒に飲み込んで、ただただ彼を見上げることしかできない。
暴走族とか組長じゃないといいな…
なんとなくだけど…
光には似合わないから。
いつの間にか、この家にいることがあまり怖く無くなっていて、以前感じていた恐怖なんていうものは消えていた。その代わりに残ったのは、好奇心と…あと、少しだけの切ない気持ち。
どうしてだろう…
怖いはずなのに…直感的に、彼は何もしてこないのではないか…と、そう信じ込んでいる自分が生まれていた。
「調子はよくなったか。」
「はい…おかげさまで…?」
「なんで質問形なんだよ。」
目を少し細める彼に、また、腹の奥がキュッと音を立てる。
気のせいかもしれないけど…光、前より表情柔らかくなったかも…
「帰れそうか。」
「うん…」
「そうか。」
光は、わたしを名前で呼ばない。
いつも、『おい』、とか、『お前』、とか、『なあ』、とかしか言ってくれない。
まあいつもって言っても、ここ一週間の話なんだけどね。
きっと今度こそ、もう、二度と光には会わないような気がしていた。
だって、きっと光はどこかのお偉いさんで、わたしなんかがそばにいたらいけない人なんだ。
そして、きっとわたしはバイトをクビになっているから、コンビニに行かない限り、きっと会えない。
光はきっともうコンビニには来ない。
『きっと』だらけだけど、きっと、もう光に会うのはこれで最後なんだ。
なぜだかわからないけど、わたしの勘がそう言っていた。
「お前は、泣かねえよな。」
いつの日か聞いたその言葉を、光はわたしの瞳を射るように見つめてそういった。
「変だよね。」
同じ言葉をわたしは返した。
ふわっと笑えば、光は眉間にしわを寄せて、心底嫌そうな顔をした。
光はきっとわかってる。
わたしのうさんくさい笑顔。心から笑ってねーだろ、って、そう嘲笑われているような気がした。
でも、それをあえて言わないんだ。
そしてわたしも何も言わない。
しばらく沈黙が続いた。
静かな部屋に、わたしの心臓の音だけがうるさく騒ぎ出す。