Darkest White
いつものように時が過ぎていった。
まるで光達なんて存在していなかったかのように、今まで通りの生活だった。
なぜだかバイトはクビになっていなかった。
もしかしたら、光達が権力でそうしたのかもしれない。
何はともあれ、元の生活に戻ることはできた。
今週の週末、お母さんはは旅行に行った。
だからわたしはよそ行きのワンピースを着て、笑顔でお母さんを見送った。
一人で台所に行って、バイト代で買ったショートケーキをお皿において、広いダイニングテーブルの前に座った。
「いただきます。」
決してテーブルを汚さないように気をつけながら、甘いケーキを口に運ぶ。
スポンジが美味しかった。
イチゴは苦手だったから、お皿の脇に置いておいた。
お母さんが帰ってきたら食べるかな…もう、腐っちゃってるか。
時計を見れば、午後の6時をさしている。
家族が夕飯を食べる時間帯だな。
広い部屋に、フォークがお皿に当たる音が、異様に大きく聞こえた。
わたしはふと、ポケットの中に入ってる白い携帯を開いた。
新品のそれは、わたしのものではない。
家に帰った時荷物を見たら、メモと共に入ってた。
『なんかあったら連絡しろバカ』
殴り書きのようなそれを見て、複雑な気持ちになった。
光は、前言ってた。
『仇で返したりしない』
きっと、責任感が強いんだ。
だから、喧嘩して別れたから(恋人みたいな言い方だけど)、罪悪感が耐えられなかったのかもしれない。
光はいい人だ。
いい人だけど、人を傷つける。
光はいつだって真実を言うから。