Darkest White
何も言わずにパーカーの腕の部分を両脇にぶらさげ、その中に丸まったままの風船を出そうともせず、ただ、突っ立つわたしを見て、光が少し目尻を下げた。
「…寂しい顔してる。」
いつもの光からは想像もできないような、優しい声。
「お前は…辛いか?」
声が出ない。
まるでしゃべることを忘れた人みたいに、ただ、光の口元を見つめる。
「俺は辛い。」
「…え?」
「俺は寂しいし、辛いし、苦しい。」
喉の奥が痛い。
「完璧な人間なんていねーんだよ。」
諭すように話す光は、まるで子供を慰める父親のような雰囲気を繕っていた。
「だから、苦しくたって、おかしいことなんてない。」
空気のように、すっと心の中に染み込んでいく言葉。
「泣けない……それも、おかしくねえんだよ。」
膝が震えて立てない。
そう。
わたしは泣けない。
笑うことはできるけど、涙が枯れてしまったんだ。