Darkest White
10月31日。
今日はお母さんが帰ってくる。
青りんごの香りがする部屋のベッドメイキングをして、家をピカピカにする。
ゴミひとつない、ほこりひとつないこの広い家は、どこかきみが悪かった。
いつものよそ行きのワンピースに身を包み、軽くヘアセットをして、台所でオムライスを作る。
そのあとお皿を全て洗い、庭のバラの様子見をし、一段落したところで玄関のチャイムが鳴る。
「はーい!」
元気よく答える。
腹の奥が気持ち悪い。
震えが止まらない。
だけどそれでも、わたしは笑顔を絶やさない。
ーガチャ
頬を縫い付けられたらよかったのに。
そしたら永遠と笑っていられた。
「ただいま。」
赤い綺麗なドレスをきたお母さんが玄関先に立っていた。
その隣に、カジュアルなジーンズと灰色のセーターを着た、彼がいた。
「凛ちゃん、風邪治った?」
笹原さんは、心配そうに私を覗き込む。
「おばさんが看病してくれたんだろう?」
「うん。治ったよ。」
微笑みながらそう答える。
「修学旅行先で病気になるなんて、ついてないなあ。」
笹原さんはははっと笑う。
「だけど無事に帰ってきて看病してもらえてよかったよ。それに、修学旅行さえなかったら一緒に旅行にいけたはずなのに、残念だ。」
「そうねえ。でも凛は楽しかったわよね?」
「うん!」
「まあ素直なんだから!」
そう言って、ペシッとわたしの頭を軽く叩くお母さんは、口角をあげてわたしを見つめる。
「だけど何より、お誕生日おめでとう!!」
そう言って頭を優しく笹原さんに撫でられる。
「おめでとう。」
お母さんも微笑む。
「ありがとう!」