Darkest White
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そいつは玄関先で、枕を両腕で抱え、今に折れてしまいそうな体に薄汚い鞄をかけて立っていた。
驚くほど大きな瞳が、肩で切り揃えられた短い髪の間から覗いている。
ぞくっとした。
人生を諦めた、そんな顔をしたそいつは、どこか昔の俺を思い出させた。
俺を見つけると、切なそうに口角をあげた。
あー。
めんどくさい。
こういう奴が俺は世界で一番嫌いだ。
無理して笑って人に合わせて。
どうしてそこまでして自分を信じることができないのか。
こいつは笑顔を貼りつけながらも、時たま眉間がピクッと寄る。
いてえんだな、どっか。
すぐにわかる。
怪我を負った人は何人も見てきた。
皆、このような顔をする。
数週間前あの医者に言われた言葉を思い出す、
『この怪我は、尋常じゃないほどの重体だ……肉体的にも、精神的にも。この子の体には、負担が大きすぎる。階段から転げ落ちるなんて嘘をつかなければならないほど、誰にも言えないことがこの子にはある。』
事故じゃねえ。
誰かの故意だ。
こいつは、誰かに、やられている。
家庭にも問題がある。
こいつの環境すべてに問題がある。