男装女子。FIRST SEASON
ただ、ぼんやり、うっすらとは覚えている。
私の中に私が二人いるみたいに。
お父さんとお母さんが射殺されて、
私は無我夢中に彼を殴った。
彼は私に殴られているのに、ずっと笑っていた。
私はその人のことは知らないのに。
ずーっと、誰かに止められるまで殴っていた。
『ああああああああああああああ!!!』
叫びながら、叫びながら。
誰かに止められるまで、ずっと。
『うあああああああああああッ!!!』
「止めろ、羽咲。」
『うあああああッ!!!!!』
「止めろ。」
パシッ
『う……おと…さん…おか…さん…。』
「…羽咲。」
『…ッ…誰…?』
我に返ると、周りには秋さんと碧、それと男の人、女の人…彰さんと蘭さんがいた。
彰さんは私の腕を掴んでいた。
彰「…もうやめろ。」
『…お父さんとお母さん、死んじゃった。』
彰「…ッ」
『…この人を、殺さなくちゃ。』
彰「オイ…ッ」
『…お父さんとお母さんの…仇を取るの。』
死んだような目で、私は彰さんを見ていた。
『………ねぇ、死んで。』
彰「…ッ秋!碧!羽咲を抑えろ!」
瞬時に行動した二人によって、私は動けなくなった。
『…離して…離して…!』
何回か、彼らを殴ってしまった。
『私は…ッ…お父さん…!お母さん…!…憎い…何で…こんな目に…お父さん…お母さん…!』
彰「…有栖川羽咲!目を覚ませ!!」
『…ッ…!』
碧「ウサギ…!」
『……あ…おい…?…アレ、何でここにいるんだっけ…?』
秋「…大丈夫か?」
『…アレ…叔父さんもいる。…なんで?…アレ、私…何で…ここにいるんだっけ。』
碧「…ウサギ…?」
『……ッ…血…血が…ねえ碧、何でこんなに血がたくさん…』
彰「…羽咲。」
『……?』
彰「…少し、眠ろうか。疲れただろ。」
この時の彰さんはまるで、小さな子供を寝かせるみたいに言った。
『…確かに…ちょっと…疲…れ…た…。』
碧「……。」
秋「……。」