男装女子。FIRST SEASON
「じゃあこれなら覚えてる?」
彼はウィッグとコンタクトを外した。
黒髪黒目。…端正な顔。
『…もう、覚えてない。』
「覚えてるさ。」
耳元で囁く。
『っ…』
「ねえ、覚えてるよね。…僕が君の両親を殺したんだよ…ねえ、覚えてるよね…?憎くて憎くてたまらない、この僕のことを…。」
『っ』
パシッ
「君の行動は分かってるさ。なんせ、ずーっと見てきたんだから…さッ」
ドサッ
『っ…離して。じゃないと殴る。』
「殴れるの?その身体で。」
『っひ…』
無意識に、声を出した。
「そーう…その顔…その表情…いいねぇ…ふふ。」
『…っ』
バタンッ
「ッテメェ!!その手を離せ!!!!」
『っ碧!』
「…また、邪魔者。…また…」
『っ逃げて碧。今すぐ、コイツから…っ』
「僕の前で他の男の名前を叫ぶなよ…アイツぶっ殺すぞ。」
『っ…。』
…相当、拗れてる。
「…厄介だなあ、君。だって、僕のものから愛されてるんだもんね。僕には愛せないのに。ねえ、何で?何でなの?」
「っお前が大切な人を殺すからだろ?!それがトラウマになってるから、お前は羽咲にも、お前の妹からも愛されねぇんだよ!!」
『…っえ…?』
「…っお前…!!!!」
バンッバンッ
『っ止めて!!!止めてよ!!!!!!』
「…大丈夫だよ、羽咲。コイツを殺してから、一緒に愛し合おうね。」
『っ止めて止めて止めて!!!殺さないで!!じゃないと、私は今すぐ死ぬから!!!』
こうすれば、止められる。
こうすれば、碧は死ななずに済む。
碧は助かる。
そう、思ったのに。
「…へぇ、じゃあ僕と一緒に死のうか。」
「ッッ羽咲!!!!!!!!」
パァンッ…。