男装女子。FIRST SEASON






彼との秘密を守って



私は何も言わなかった。



…いや、何も言えなかった。



全部、私のせい。



私が、周りを不幸にする。



私がいなくなれば…



ずっと、そんなことを思っていた。



入院して、周りに何も言わずに退院して



『…お金は、ある。』



組織で稼いだお金は使わずにとっておいた。



一人でも生きていける。



そう思った。



周りに被害が起きないように、そっと、静かに暮らそうと思った。



事実上の行方不明。



もちろん、私の力を駆使して、どこにいるかバレないように



変装もして。



その時は髪の毛も男の子みたいに短くして



動きやすい服装だったもんだから、しょっちゅう男の子に間違われた。



…それが逆にやりやすくて、男子として過ごした。



それから少し経ったある日。



ピンポーン



誰かが訪ねてきた。



宅配は頼んでないし、住民との関係も薄い私の家に…人が来る。



警戒心MAX。



ピーンポーン



ガチャッ



『…あれ、誰もいない?』



玄関を開けると、誰もいなかった。



押し間違えか…と思って、部屋に戻ると



「こんにちは、有栖川羽咲さん。」



『ッは!!!!?』



部屋に、見知った中年のおっさんがいた。



「いやー、久しぶりだねー、いつぶり?1ヵ月ぶりじゃない??」



『いや…え…何で…貴方がここに…ボス…。』



ある組織、の第一責任者である人が



我らがボスが、お茶の間にいた。



『…絶対にバレないと思ったのに…ボスは流石だね…。』



「ふふふ。こう見えて僕は凄腕のハッカー兼組織の長だからね。」



『…太った?』



「っ太ってないよ!!?」



『…禿げた?』



「禿げてない!!…多分。」



『…ここの居場所、誰かに言った?』



「言ってないよ。だって、他の人に言ったら君はまたいなくなるでしょ?」



『…まあ、ボスがここにいる時点で、違うところに行こうとは思ってるよ。』



「えー、せっかく見つけたのにぃ。」



『とか言いながら、実は私がここに来た時から知ってたんでしょ、どーせ。ボスのことだからさっ。』



「ふふふ。」



『…はー…傍から見ればそこら辺にいるただの禿げた中年のおっさんなのになぁ…。』



「ええ、僕今結構悪口言われた…。」



『……ねえ、みんなはどうしてる?』



「…血眼で探してるよ、君のことを。」



『…まあ、多分一生見つからないだろーな。なんせ、私の実力を最大限にフル活用してるからね。』







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