ルーンの姫君《連載》
「ユリシア姫、どうぞ驚かないでください」


白い衣に身を包んだその男は、私の前に跪き、立ちすくむ私のドレスの裾に口づけた。

「あなたはどなた?どうして私の名前をご存知なの?」

恐る恐る尋ねると、男は顔をあげた。


野生味のある黒い髪、そして黒い瞳は理知的光をたたえている。

「おひさしぶりです。私はゼル。ようやく姫にお会いすることが出来ました」


驚き恐れながらも、おひさしぶりという言葉にいつ会った者かと記憶をたどる。



修道院の人たちではないし、村人ではない。記憶をただっていくと黒い瞳に思い当たる人物がいた。


「あなたはあの時の?昔怪我を治すためにしばらく過ごされたお客人」

「ええ、10年前、シザーレの修道院であなたにはずいぶんお世話になりました。
あの時はとても可憐な少女であったのに、今はこのように艶やかになられて」


「ゼル様はいったいどういうお方なのですか?あの鳥のお姿はいったい?」
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