ルーンの姫君《連載》

薬湯

こうして一昼夜休む間もなく空を翔けてたどり着いたのは、はるか西の彼方、名も知らぬ国の深い山間にあるゼルの館だった。

人の姿をとった後もここまでずっと抱きあげて運んできてくれた。

粗野な雰囲気を持ち合わせてはいるが、この人はやさしい人だ。



そんな女の直感と、まだ素直に信じきれない気持ちがせめぎあい、つい生意気に言い返してしまう。


「だからといって、服のままではせっかくの湯が汚れてしまいましてよ?」


「じゃあ、私が脱がしてさしあげたらよかったのかな?」


「なっ、なにを破廉恥なことをおっしゃるの!」


乙女が殿方に服を脱がされる時は、それは婚礼の日まであってはならない、肌も出来るだけ見せてはならないと厳しく育てられてきた。


「まあ、その格好じゃあまり変わらないと思うが」


そういいながら注がれる視線に気付いた私は真っ赤になった。




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