ルーンの姫君《連載》
「ひゃんっ」


いつのまにか浴槽の淵に座っていたゼルは、ふいに手を湯に差し込むとしぶきをたてて私にかけた。

「い、いきなり、なにおっ、ぁんっ」

しずくは私の顔に張り付き、そのままゆっくりと頬を伝って口や首へとつたっていく。


唇からはいりこんだ湯は、口の中で舌にからみついた。


だが、口から出すわけにもいかずむりやり飲み込むと、すぐに頭がぼうっとして身体がしびれるように自由がきかなくなってきた。


支えていた腕に力が入らなくなり、腹ばいになって膝とひじでからだを支え、ゼルに助けを請う。


「ゼルさま、もうあげてくださいませ......」


「どうしました?まだ湯に浸かったばかりですよ?」
からかい口調でしばらく考えこんだ後で、ようやく手を伸ばして私の腕をつかむと、浴槽の外へと連れだしてくれた。

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