ルーンの姫君《連載》
高鳴る胸を必死に沈めながら、慎重に、しとやかに謁見の間へ続く赤い絨毯を踏みしめた。
慣れぬ靴で足が痛む。
針の上を歩くように一歩ごとに痛みがつきあげてくるが、今までの不遇な生活への離別の儀式だと思えば苦にならない。
しずしずと礼にのっとり、うつむいたまま王壇の下まで進み出て深く頭をさげひざをついた。
「シザーレより、ユリシア・モリアート嬢のお越しでございます」
王の側近から「モリアート」という母の姓で名前が呼ばれると、周囲から静かなざわめきがたちのぼった。
「顔をあげよ」
低く地を這うような声に、私はそっと王座を見上げた。
「アリス・モリアートの娘、ユリシアにございます」
賢王、獅子王として司教や修道女達から伝え聞き、思い描いていた立派な父王はそこにはいなかった。
慣れぬ靴で足が痛む。
針の上を歩くように一歩ごとに痛みがつきあげてくるが、今までの不遇な生活への離別の儀式だと思えば苦にならない。
しずしずと礼にのっとり、うつむいたまま王壇の下まで進み出て深く頭をさげひざをついた。
「シザーレより、ユリシア・モリアート嬢のお越しでございます」
王の側近から「モリアート」という母の姓で名前が呼ばれると、周囲から静かなざわめきがたちのぼった。
「顔をあげよ」
低く地を這うような声に、私はそっと王座を見上げた。
「アリス・モリアートの娘、ユリシアにございます」
賢王、獅子王として司教や修道女達から伝え聞き、思い描いていた立派な父王はそこにはいなかった。