美意識革命
革命前夜
― ― ― ― ― 

由梨に悪いから…ごめん。

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 確かにもう終わりにしようかと言ったのは由梨(ゆり)の方だった。遠距離恋愛に疲れていたのも本当だったし、彼の態度に疑問を感じていたのも事実だったからだ。
 だけど、まさか大の大人にこんな終わりがあるなんて。


「…マジであり得ないんですけど。」
「…だよね。ていうか、葵の方が怒っててそれはそれで笑えるから。」
「ぜんっぜん笑えないわ!私の可愛い由梨にその仕打ち!別れて大正解だよ。」

 土曜日のディナータイムに少しお洒落なお店を予約してくれたのは、社会人になってもよく会っている数少ない友達、葵(あおい)だ。大学の同期で、価値観もよく合い、こうして定期的に美味しいものを食べに行く仲だ。恋愛の相談もできる、とても頼れる友人である。

「なーにが由梨に悪いからよ。お前が向き合う勇気がなかっただけだろーが!」
「…葵…口の悪さを隠せてない。」
「隠すつもりがない!」

 そういう裏表のない葵だから安心して付き合えるし、由梨は葵のそういうところが好きだ。

「それで、由梨はそのLINEをどうしたの?」
「いや、ちゃんと会って終わりにするべきだなって思ったから会いたいけどって送ったし電話もしたけど、どちらも無視。LINEの方は既読にはなったけど。」
「…ムカつくわほんと。何度でもあの世へ行け。」
「死ねとか殺すとかじゃなくてあの世へってとこが葵的にはオブラートだね。」

 自分の何倍も怒ってくれる人がいるからこそ、自分がここまで穏やかなのかなんて、冷静に考えることができるくらいには自分の気持ちに折り合いをつけたつもりだ。別れたのが昨日。そして今日はこうして葵とディナーを食べている。たくさん悩んだり、たくさん泣いたりすることはもう一通りやり終えた。

「クソ男は一生一人で寂しく生きてればいいんだよバーカ!」
「…はいはい。ありがとね、葵。」

 別れたことは仕方がない。そして次に自分がどうしたいか。それを考えるために、今日は葵に会いたかった。
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