美意識革命
「失恋しました。割と最近です。1ヶ月以内です。」
「…最近ですね。本当に。」
「はい。なんていうか、ちゃんと顔を合わせないで、ラインで終わっちゃったんですよね、私たちの関係。」
「え?」

 森は困惑した表情を浮かべている。

「…ですよね。いや、私もさすがにびっくりです。」
「…えっと、僕もそういう風に別れた経験がないので…。」
「私も初めてですよ。なんていうのかな…突然切られた、みたいな感じで。予兆が全くなかったわけじゃないんですけど…ね。」
「どうしてなのかって、九条さんの中では理由みたいなの、あるんですか?」

 由梨は小さく息を吐きだした。

「…確かめることができなかったので、私の勝手な考えでしかないんですけど…。」
「はい。」
「遠距離に疲れて、今後の関係に迷って、疑問を投げかけたのは私なんです。その言い方がよくなかったのかなとか、少しずつ彼の方にも負担はかけてたのかなとか、…まあ、なくはないです。」
「なるほど。」
「でも…。」
「はい。」

 森の方が見れなくなってきた。由梨は膝の上できゅっと手を握りしめた。

「何か私に悪いところがあるなら、言ってほしかった。直接。別れたかったわけじゃなかったし…嫌いになったわけじゃ…なかった、ので。」

 最後の方は、声が小さくなってしまった。しかし、由梨の声をきちんと拾ってくれた森が言葉を続けた。

「…そうですよね。一方的に切られちゃうの、僕も嫌かな。」
「だから、えっと…振り切りたくて、ジム通い始めたんです。」
「え?」

 由梨はぐっと目元を拭って、森の方へと顔を向けた。
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