美意識革命
「お通しです。」
 
 出てきたのは湯豆腐だ。一緒に塩も出される。

「豆腐自体に味がついているので、そのままでも美味しいですよ。物足りなければ塩を少しつけるのもオススメです。」
「わかりました。まずはそのまま試してみます。」

 一口サイズに箸で割って、口に運んだ。森が言った通り、豆腐だけでも充分に味がする。優しい甘さと温かさが口いっぱいに広がった。

「…美味しいですね!」
「へへ、よかった。美味しそうに食べてくれて。」
「塩バージョンも食べてみます。」
「はい。」

 少しだけ塩をつけて、口に入れた。これはこれで美味しい。さっきのまろやかさが少し薄くなって、味がはっきりする。

「これも美味しい!塩だけでこんなに違うんですね。」
「じゃあここからが本番ですよ、九条さん。何食べましょうか。」
「森さん、苦手なものはありますか?」
「僕のことは気にせず、九条さんの食べたいものをどうぞ。」
「え、だってこういうところってシェアしませんか?私、少しずつ色んなもの食べたいので、森さんが苦手で食べれないもの頼んじゃったら困るじゃないですか。」

 居酒屋は実はあまり来ない。どちらかといえば由梨は、自分でつまみを作って家で飲むタイプの人間だ。だからこそ、居酒屋に来た時は少しずつ色んなものを食べたい。

「…わかりました。じゃあまずは九条さんが食べたいものを言って下さい。苦手だったら苦手ですって言います。」
「そこで私に遠慮しちゃだめですよ、絶対。」
「はい。わかってますよ。」

 由梨は悩みに悩んで、豆腐サラダとえいひれ、揚げ出し豆腐をチョイスした。
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