美意識革命
「…すみません。じゃあ次いきます。」
「どうぞ。」

 森は楽しそうに笑っている。ちょっと困らせてみたい気持ちにもなるが、困らせられそうな質問が思いつかない。

「最近ハマっていることは?」
「…難しいですね。あんまり何かに熱中するってことがなくて…。あ、でもインスタグラムで犬の写真とか動画を見て癒されてます。」
「…インスタやってるんですか。」
「見る専門ですけどね。アカウントはありますよ。」
「意外です!」

 森の意外な一面を知った。それが嬉しくて、由梨もつい笑顔になる。

「僕も九条さんの好きな食べ物、知りたいです。」
「えっと…最近はプリンが好きです。色んなプリンを食べ比べするのがマイブームでもあります。」
「はは、可愛いですね、それ。」
「え、そうですか?特に写真撮ってインスタにあげるわけでもないですよ?」
「プリンは美味しく食べてなんぼですよ。」
「…それもそうですね。」
「…僕の方からも、質問していいですか?」
「あ、もちろん!」

 森は一度だけ俯いて、しかしはっきりと由梨の目を見て質問を口にした。

「…九条さんの好きなタイプって、どんな人ですか?」
「え…えっと…。」

(そうか…!こういうのが相手を困らせる質問か…!)

 今更気付いたところで遅い。だが、好きなタイプと言われても、今までの好きな人を並べて考えてみたが一貫性というものがまるでない。だから長続きしなかったり片想いで終わってしまったのかもしれないが。

「…今思い返したら、一貫性が全然なくて一概にこうとは言えないんですけど…。」
「はい。」
「…理想、言います。」
「はい、ぜひ。」
「今の私の理想は、一緒に隣を歩んでくれる人です。ちゃんと話をして、聞いて、考えを伝えあえる人…ですかね。」
「…なるほど。じゃあ、僕が九条さんの隣を歩きたいって言ったら、九条さんは困りますか?」
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