美意識革命
可愛さの正体
― ― ― ― ― 
 7月がやってきた。夏だ。もうかなり暑い。そしてジムは続けているが、ジムに入る瞬間に勇気を要するようになってしまった。
 …つまり、あの告白ともとれるあの発言から、もう3週間は経ってしまっている。いまだに返事ができないのは、まだ混乱しているからが5割。そしてもう5割の正体には気付いているが、口に出したくない。いつか森には言わなくてはならないことではあるのだけれど。わからないことにして蓋をしておこうとするずるい自分が勝ちまくっている。

― ― ―

「僕が九条さんの隣を歩きたいって言ったら、九条さんは困りますか?」
「え…?」

 最初は何を言われているのかわからなかった。しかし、しっかりと森の顔を見た瞬間にわかってしまった。少し赤い頬の意味に。この想いは嘘ではない、とも。

「…顔が困ってますね。ごめんなさい、変なこと言いました。忘れてください。」
「え…っと…。」

 言葉が続かなかった。まさか森がそんな風に想っていてくれたなんて考えたこともなかったし、あまりにも唐突だった。しかし、森に忘れてなんて言わせるつもりもなかった。そんなに困った顔をしてしまったのだろうか。

「…これ、ありがとうございました。おやすみなさい。」

 森の方が先に由梨に背を向けたのは初めてだった。だからこそ、由梨は何も言えなかった。

 そしてそれから3週間。ジムのトレーナーとジムに通う人の位置で、挨拶と会釈を交わす程度には普通に接している。普通かどうかは、自信がないが。

(…まとまらない、どうしたらいいのか。)

 困っていた。葵に相談するのも、違う気がした。それは森も想いを無下にすることだと思ったから。
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