美意識革命

「…何がだめだったのか、何を間違えたのか、本当の答えはわかりません。また同じ間違いをするかもしれない。森さんに嫌な想いをさせるかもしれない。…私も、また同じ失敗をして落ち込むかもしれない。…私、何も…変われてません。優しくなったわけでも、可愛げを身につけたわけでもないです。それで…森さんの隣に立って、まっとうに恋愛できる自信が、…ないです。森さんが優しくて、いい人だから…私でいいって思えません。」
「…怖いですよね。誰かを好きになるのって。その気持ち、全く同じだとは言えないけれど、覚えはあります。」

　森が由梨を抱きしめる腕が少しだけ強くなった。

「恋愛がちゃんとできる自信、僕にもないですよ。だって最後に泣かせたのは僕です。あ、前の彼女のことです。そんな失敗を修復できなくて、終わってしまって。…自信がないのは僕も同じです。」
「…森さんでも失敗するんですか。」
「します。っていうか、しましたね。でも、失敗を一緒に考えられる人だと思ったから、僕は九条さんのことが好きになったんです。」

『好き』の言葉は重い。胸をドクンと打つ。

「…九条さん」
「はい。」
「僕の言い分、聞いてもらっていいですか？」
「…あ、はい。」

　由梨の方は、森の『好き』の言葉が重く突き刺さって、言いたいことが飛んでしまっていたので、この申し出は素直にありがたかった。