美意識革命
 時計がさすのは23時25分。気が付いたらこんなに遅くなっていた。

「…絶対変なことしないから。」
「…そういうところの心配はしてないです。私が嫌がること、森さん絶対しないです。」
「…信頼されすぎてるのもどうなんだろう…。」
「…私が、中途半端な態度だから…ですよね、本当にごめんなさい。」
「あ、いや!ただ、今日から明日に変わる時間は一緒にいたいって思っただけで…。ってかそれはずっと前から思ってたけどずるずる言えずに…。ごめんなさい。」

 森が頭を下げる。こんな風に2人で会うことが増えてからも、森はいつだって素直だ。謝るし、気持ちもちゃんと伝えてくれる。そして由梨はといえばそれにずっと甘えっぱなしでここまできた。

「…えっと、お風呂入ったら戻ってきます。泊めてください。大急ぎで行ってきます!」
「え、い、いいの?」
「…森さんの誕生日、ちゃんと祝いたいです。」

 それ以上何も言えなくて、由梨は背を向けて足早に部屋をあとにした。

― ― ― ― ―

「…突然オッケー出すとか…由梨さん全然読めない…。」

 今まで森が由梨について読めた例などない。ただ、森の口元は緩みっぱなしだ。

「…一番楽しい誕生日かも。」

 誕生日まで残り30分。一生懸命勇気を出して自分の誘いにのってくれた由梨を想うと、自然と笑顔になる自分がいた。
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