美意識革命
 由梨は森の背中に片手を回し、空いている手の方で森の頭を撫でた。

「え…?」
「なんだか森さんが可愛くって。」
「もうちょっと続けて?」
「はぁい。」

 森の匂いがいつもと少し違うことに段々気付いてきた。違いに気付くと心拍数が上がる。

「…ドキドキしてる、由梨さん。」
「森さんのせいです!」
「…嬉しいなぁ、ようやくだ。」
「…お待たせしました。本当に。」
「いいんだよ。だって待つって言ったの俺だから。」

 敬語が外れた途端に、僕が俺に変わって。
 2人きりになると、ちょっと甘えてくるところも見せてくれるようになって。
 それでも変わらなかったのは、目を合わせて話をしてくれるところと、優しい手で。

「あ、12時過ぎました!お誕生日おめでとうございます!」
「…ありがとう。」

 腕から解放されたかと思えば、そっと伸びてきた手が由梨の頬に触れる。そのまま引き寄せられるように唇が重なった。

「…はは、真っ赤。」
「森さんだって赤いです!」
「だって仕方ないじゃん。嬉しいし可愛いし、…感情が追い付かない。」
「…森さんが私と同じだと、安心します。」
「え?」
「心臓のドキドキって音の速さとか、顔の赤さとか…。私だけじゃないって思えるから…。」
「同じっていうか、絶対全部俺の方が上でしょ?だってどう考えても俺の方が由梨さんのこと好きだもん。」
「そ、そんなことないです!私だってちゃんと好きです!」

 こんな風にさらっと言うつもりはなかった。しかし、目の前の森の顔はみるみるうちに、より赤く染まっていく。
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