美意識革命
 しかしすぐ苦しくなって、由梨は鼻から上だけを出した。

「ははっ、可愛いなぁ、由梨さんは。」
「…物好きです、森さん。」
「こういう姿見れるのって特権って感じがする。」
「…これからいつでも見れますよ?」
「…いきなり爆弾落とすのやめて。」
「ば…爆弾ですか!?」
「また泊まりに来てくれるんだ。」

 額を重ね、森がそう呟く。一度合った目が気まずくて、由梨の目は泳ぐ。

「なんかねぇ、由梨さんは自覚してないかもしれないけど、俺が喜ぶツボ全部押してくよね。」
「え!?そうなんですか!?」
「うん。いっぱい俺のために頑張ってくれてることも、話をちゃんと聞いてくれることも、言いたいこと我慢しないで言ってくれることも…。ちゃんと全部嬉しいって思ってるよ。」
「…そんなのは、私も同じです。」

 由梨の方から距離を詰め、森の胸に顔をくっつける。この匂いがあまりにも自然に馴染むから不思議だ。

「…寿人、さん。」
「っ…ま、待って!今呼ぶの!?」
「…よ、呼ぶ、練習、です。」
「この距離でそんな顔で名前呼ばれてさぁ…俺試されてる?」
「試されてる?」
「これでもいろいろ自制してるんだけどなぁ。」
「また我慢させてます?」
「…我慢なんかしてないよ。だってこれから、隣を歩かせてもらうんだから。」

 森はそう言うと、ゆっくりと起き上がる。由梨も慌てて起き上がった。

「朝ごはん、一緒に作ろっか。」
「えー森さん、座っててください。」
「森さんに戻った!名前がいい!」
「ひ、寿人さんは座ってて!」
「だって隣に立ちたいんだもん。」
「そ、そんなのこれからいくらだってできますから!」

 由梨の言葉に、森はにっこりと笑った。

「…そういうところ。由梨さんの強いとこだよね。」
「え?」
「そういうところを好きになっちゃったんだから、完全に俺の負けだよね。」
「恋愛って勝ち負けですか?」
「惚れた方が負けだよ。これからずっと振り回されて生きていきそう。」
「…そんなの、私だって寿人さんに振り回されてますからね!」
「え!?俺、振り回してる?いつ!?」
「…内緒です。」

(あなたの一挙一動に、あなたのくれる言葉に、私がどれだけ心動かされてると思ってるの!)

*fin*
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