大切なキミの一番になりたかった。
「はい、もしもし!」

緊張が増す中、電話の相手の声を待つ。すると電話越しから聞こえてきたのはお母さんの声だった。

『……知花?』

「お母さん……?」

なぜか私を呼ぶ声は震えていて、戸惑いを隠せない。一馬も心配そうに私の様子を見守っている。

「お母さん、やっぱり急患で遅くなるの? まだ帰ってこられそうにない?」

なにも言わないお母さんにこちらから声をかけると、信じられない答えが返ってきた。



「一馬、こっち!!」

「あぁ!」

小雨が降る中、傘もささずに走って向かった先はお母さんが勤めている総合病院。

一馬を誘導し向かう先は別棟にある緊急病棟。

受付で声をかけると、すぐに連絡をもらったお母さんが駆けつけた。

「知花……一馬くん」

「お母さん……」

いつもハツラツとしているお母さんの面影はなく、泣いたのだろうか……。目が腫れている。

その姿に電話で聞いた話が嘘ではないんだと実感させられてしまう。
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