大切なキミの一番になりたかった。
私も一馬もお互い一言も発さない。このドアの向こうに広がる光景が怖いから。

ドクンドクンと脈打つ胸の鼓動。

お母さんはドアを数回ノックすると、ゆっくりとドアを開けてくれた。

「失礼します」

先に入ったお母さんに続いて部屋の中へ足を踏み入れる。


すると真っ先に目に飛び込んできたのは、ベッドの前で泣いている美野里のお母さんとお父さん。……そして、ベッドに横たわる変わり果てた美野里の姿だった。

「……う、そ美野里……?」


声も足も震えてしまう。だってそんな――。美野里……昨日まで元気だったよね? 夜も電話で話して『また明日ね』って言ってた。

それなのにどうして?

「美野里……? うそだろ?」

隣から聞こえてきた一馬の声も震えている。

すると私たちが入ってきたことに気づいたおじさんとおばさんが、こちらを見た。

目を真っ赤にさせて私たちを見つめる姿に、涙がこみ上げてしまう。

「美野里……」

ふらつきながら美野里のベッドに近づく一馬。

けれど間近で美野里の姿を見た瞬間、彼は崩れ落ちた。
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