大切なキミの一番になりたかった。
「……知花?」

視線が合うと、ポツリと呼ばれた名前。

声は弱々しく、腕や顔には包帯が巻かれ、ガーゼが貼られていたりと、目を逸らしたくなるくらい痛々しい。

「ユウくん……」

お互い見つめ合ったまま、それ以上言葉を発することができない。

ユウくんを支えたい、そんな漠然とした想いでここまで来てしまったけれど、私……ユウくんにどんな言葉をかけたらいいの?


ただ彼を見つめることしかできずにいると、ユウくんは力なく笑った。

「……悪い、知花っ」

放たれた言葉と共に、ユウくんの瞳からは大粒の涙が零れ落ちる。

それは初めて見たユウくんの涙だった。

「ユウくんっ……」

気づいたら勝手に身体は動いていた。

手離した花は床に落ちていく中、一目散に向かう先はユウくんの元。

泣いているユウくんを抱きしめたい衝動にかられたんだ。


ベッドに腰掛けているユウくんの身体を抱きしめると、彼は私に体重を預け、声を押し殺して泣いている。
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