大切なキミの一番になりたかった。
玄関先にある置時計で時間を確認すると、お母さんは慌てて出かけていった。

「よし、それじゃ気合い入れてやりますか!」

背中まである髪をひとつに結んで、さっそく家事に取りかかった。


お母さんは近くの総合病院で看護師として働いている。今日みたいに日勤の日もあれば、夜勤の日だってある不規則な生活。

そんなお母さんに代わって家のことをやり始めて、もう二年になる。


洗い物をした後ゴミを捨てに行き、二階のベランダで洗濯物と布団を干し終えると、庭先から聞こえてきたのは私を呼ぶ声。

「おーい知花~おはよう」

「はよ」

下を見ると私に向かって笑顔で手を振っていたのは、お隣に住む樋山(ひやま)美野里(みのり)。そしてもうひとりは、はす向かいのアパートに住んでいる富永一(とみながかず)馬(ま)だった。

「おはよう。美野里、一馬! ちょっと待ってて、今下に行くから」

空になったカゴを手に一階へと急ぐ。そして玄関のドアを開け、ふたりを招き入れた。
< 3 / 50 >

この作品をシェア

pagetop