大切なキミの一番になりたかった。
「お父さん、美野里と一馬が作ってきてくれたお弁当だよ」

手を合わせ見つめる先は、仏壇に飾られている写真の中の笑顔のお父さん。

お父さんは私が小学六年生の時、癌で亡くなった。癌が見つかったのは、私が五年生の時。

一年間の闘病生活は長くて、でも家族三人で過ごしたかけがえのない時間だった。


『絶対治してみせる』そう宣言したお父さんだったけれど、日に日に弱っていく姿に会うたび辛くて、何度も家で泣いてしまった。

大好きなお父さんがいなくなるなんて、想像さえできなかった。

これからもずっと家族三人で毎日暮らしていける、そう信じて疑わずにいたから。

当たり前の日々ほど、幸せなことはないんだと実感させられたんだ。


お母さんは家族だからと言って、お父さんの病状を包み隠さず話してくれた。幼い私でも理解できるように時間をかけて何度も……。

その度にお母さんは必ずいつも言っていた。『大丈夫、お父さんは治る。そう信じよう』って。
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