大切なキミの一番になりたかった。
けれど神様は残酷だった。癌の進行は進み、お父さんは訪問看護を利用し自宅療養の道を選んだ。

残された最後の時間を自宅で、そして私たちといっしょに過ごすために。


お父さんが退院したのは十二月三日。

ちょうどクリスマスやお正月といった大イベントを控えた時期だった。お母さんは休暇を取り、お父さんの看病に専念していた。

だから私は学校から家に帰ると、ふたり揃って「おかえり」と出迎えられるのがうれしくてたまらなかった。

共働きで学校から帰ってきてもいつもひとりだったから。

最後に三人で過ごした時間は短くて、でもとてもかけがえのないものだった。


たくさん話して、笑い合って。そして今でも忘れられないの。クリスマスにお母さんに教えてもらってこっそり作っていた手編みのマフラーをお父さんにプレゼントした時、初めて見たお父さんの涙を――。
< 7 / 50 >

この作品をシェア

pagetop