大切なキミの一番になりたかった。
どんなに治療が辛くてもお父さんは弱音を吐かず、私の前ではいつも笑顔だった。

そんなお父さんが涙をボロボロと零し、マフラーを握りしめ「ありがとう」って何度も言ったんだ。

最初は照れ臭くて渡そうか迷ったけど、勇気を出してプレゼントしてよかったと心底思った。


それから三人で年を越し、お父さんは「知花の卒業式と入学式に出ないとな」「入学式で制服姿を見るのが、今から楽しみだ」って言っていたけれど……一月二十三日。

お父さんは自宅のベッドで私とお母さんに看取られ、静かに息を引き取った。

最後に「幸せになれ」と言い残して――。

今でもお父さんの死に顔を思い出すと、涙が零れそうになる。


それでも今、こうやって元気に毎日過ごせているのは、みんなのおかげ。とくに美野里はお父さんの癌が発覚した時から、ずっとそばで励ましてくれていた。

お父さんが亡くなってからも、なにかと気遣ってくれて。彼女の存在があったから今の私がいるんだ。


お母さんに代わって家事をしなくちゃいけない私のために、こうしていつも家に来て手伝ってくれたり、ゲームを持ち込んだり。私がひとりでも寂しくないようにしてくれているんだ。

美野里と一馬、それともうひとり……。
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