極上求愛~過保護な社長の新妻に指名されました~
「…で、これが高校時代」
耀さんの手によって開かれたページを見て、一瞬拍子抜けする。

「ふふ、意外だった?高等部ではまぁそんなにぶっとんではなかったわ。見た目は」
「見た目は?」
「ま、相変わらずモテてはいたけどね」

少し含みのある言い方がなんだか気になったけれど、そこでぱたんと閉じられたアルバムによって言葉になりそうだった思いは固まらずに溶けていく。

「雪、大学からは経営学を学ぶためにイギリスに行っちゃったから…私が持ってる写真はここまでなの、ごめんなさいね」
「いっいえ、そんな!見せて下さってありがとうございました」
「どういたしまして。少しでも茜ちゃんの中の雪を増やすことができたかしら」

はっとして耀さんの顔を見上げると、優しく細められた瞳がこちらを見つめていた。

「過去の雪に会うことはできないけど、こうやって思い出に触れることはできる。どうやっても過去を変えることはできないけど、未来は自分の手で作っていくことができる。もちろん大切な人と2人で一緒にそれを築いていくことも」

私が抱いてしまった欲張りな不安を包み込むように、耀さんの言葉が私の心をふわっと温めていく。

「これからもまだお互いの知らない部分を知っていくことがあるかもしれない。だけど、目の前にいるその人と、自分の中にいるその人の心を信じられる…そんな強さを茜ちゃんなら持つことができると思うの」

相手を信じる、強さ…

「雪が自分の手で切り開いた未来の中で大切な人と幸せに生きていってくれることを、アタシもユウも願ってる。こんなの雪が聞いたら余計なお世話だって怒られちゃうかもしれないけど…雪、本当に茜ちゃんのこと大切に思ってるみたいだから」

小さい頃から雪さんのことを知っている耀さんだから言える、耀さんにしか言えない、そんな言葉なんだろうと思った。
私の知っている雪さんは、まだ彼の、人生の中のほんの一部分でしかない。
だけど…私なりにこれから先も雪さんのことを支えていきたい、そう強く感じた。
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